国王陛下の独占愛
(13)

 今回の件の事後処理に追われながら、セヴェリは一つの確信を
 胸に抱いていた。

 今、セヴェリは一冊の書物を手に、東の回廊の壁にかかる、一つの
 絵の前に立っていた。

 その絵には、60年前、蛮国ガスタロの侵攻を防いだ時の様子が
 描かれている。

 その絵の中で、白い狼とともに描かれている術師の姿を、セヴェリは
 先ほどからじっと見つめ続けていた。

 その絵の中の術師の姿と瞳の色を確認し、手に持っている60年前のことを
 詳しく記した書物にもう一度目を通すと、セヴェリは側に控えていた
 トゥーレに短く告げた。


   「すぐ、ベルススへ向かう」



       *
       *
       *
       *



 ベルススに着いたセヴェリを出迎えたのは、セヴェリの乳母を長く務めた
 ミルバ夫人だ。

 セヴェリの顔を見て、ミルバは言った。


   「気付かれたんですね」


 その言葉を聞いてセヴェリは、今日ここにやってきたことは
 間違いではなかったと思った。
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