国王陛下の独占愛

   「女将さん、まず一回目が焼けたから。」


 厨房の方から、そう声が聞こえ、女将が答える。



   「ありがとうよ、ソリ。今日は、あと2回ほど焼いておくれよ。」

   「はーい」



 あいかわらず、何かが焼ける良い匂いが漂ってくる。

 そしてカチャカチャと、食器か何かが触れ合う音。

 ああ、いいな、とセヴェリは遠くなっていく意識の中で思った。

         
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         *


 眠っていた意識がもどったのは、目の前のテーブルに何かをコトリと置く気配がしたからだ。

 ぼんやりと目を開け、セヴェリは前を見た。

 

 目の前には眉間にしわを寄せ、唇をぎゅっと引き結んだ娘がいて、こちらをじっと見ていた。

 蜂蜜色の髪をひとつに結んで背中に垂らし、薄い藤色の瞳が避難するようにゆがめられている。



   「コーヒーが入ったから持ってきたけど」



 目の前の娘がそう言うのを聞いて、セヴェリはテーブルの上を見た。

 熱そうなコーヒーの入ったカップが目の前に置かれている。



   「ああ、ありがとう。」



 セヴェリは礼をいって、周りをみまわした。

 どれくらい眠っていたかわからないが、食堂はもう始まっているようで、客が二人ほどそれぞれの席に座って
 朝食を食べていた。

 
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