国王陛下の独占愛

 途端に良いことを思いつき、セヴェリは笑い出しそうになったが
 目の前にパルヴォの丸い顔があることに気づいて、慌てて
 口許を引き結んだ。

 頭の中でもう一度、今閃いた計画をなぞってみる。

 自分の思いつきに及第点をつけて、セヴェリはパルヴォにわからぬように
 そっと笑みをもらした。

 そしておもむろに、目の前のカップを持ち上げると口をつける。

 一口飲んで、カップをソーサーに戻すと、セヴェリはパルヴォをじろりと見た


   「なんだ、このお茶は」

   「は?」

   「味も素っ気もない、こんなお茶が飲めるか!」


 突然怒り出したセヴェリにパルヴォは慌てた。


   「し、しかし、以前、陛下はこのお茶をよく召し上がって
    みえました」

   「駄目だ、駄目だ、もっと苦味が強くないと!
    パルヴォ、お前これから厨房へ行って、茶葉を選んでこい」

   「わ、私がですか?」

   「国王の私が、自ら出向けというのか」

   「いいえ、めっそうもありません」

   「長く私に仕えたお前なら、私の好みはわかっているはずだ」

   「それは、まぁ......」

   「わかったなら、早く行け」

   「は、はい」


 小太りのパルヴォが、短い足を懸命に動かして、せかせかと部屋を
 出て行くのをセヴェリは眺めた。

 そしてパタンと執務室の扉が閉まると、セヴェリはにっと口角を引き上げて
 笑った。
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