国王陛下の独占愛

 ソリが出て行くのを見送ったセヴェリはすぐにトゥーレを呼ぶ


   「ソリに気づかれないよう、送ってやってくれ」


 まだ、顔色が悪かったのに......と思い、自分を押しのけるようにして
 出ていってしまったソリをセヴェリは思った。


   「からかってなどいない......」


 さっきまでソリが横になっていたベッドを見て、セヴェリはそうひとりごちた。





 
 まだ早い胸の鼓動をおさえながら、ソリは夜道を家へと急いでいた。

 何度打ち消しても、今見たセヴェリの顔が浮かんでくる。

 今まで見たことのないセヴェリの表情だった。

 まるで愛しいものをみるような眼差し。

 そんなはずはないと否定してみても、セヴェリの青灰色の瞳を思い出すと

 胸が甘やかに震えた。

 その時のソリは、自分の気持ちにとらわれていて、自分の後ろに誰かが
 近づいたことに少しも気づかなかった。

 木戸口から出て、坂を下り始めたソリを近づいてきた黒い影がドンと
 突き飛ばす。

 よろけた身体を壁に押し付けられたソリは、自分を突き飛ばした人物の
 手にキラリとひかるナイフがあるのを見て、身体を強張らせた。

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