国王陛下の独占愛
(11)

   「北の隣国、ダコスの政情が不安定だというのは確かか?」


 セヴェリの問いに外相が答える。


   「はい、ダコスは三つの種族が集まる国。今までは我が国に
    友好的な種族が権力を握っていましたが、最近、力をつけてきた
    種族は、我々に対し非常に好戦的です」


 外相の言葉に合議の場にざわめきがおきる。


   「ダコスが戦を仕掛けてくるとは決まったわけではありませんが、
    備えは必要かと思います」


 その言葉を聞いていた、領相のザクロスが口をひらく。


   「ダコスとの境になるムスカの砦に一度、国王自らが
    出向かれるというのは如何ですかな?
    隣国に対する牽制になるとともに、砦を守る兵士達の士気も
    たかまりましょう」

   「そうだな、長く北へは赴いていない。一度そのことを
    検討しよう」


 ザクロスの言葉に深く頷き、そうセヴェリは言った。


        *
        *
        *
        *


 合議の場から戻ってきたセヴェリにパルヴォが言う。


   「北といえば、アミラ様がニクラス様とともに北の離宮に
    いかれています。」


 一週間ほど前、しばらく気晴らしに王城を離れたいとアミラ妃が
 言ってきたのは覚えているが、行先が北の離宮だったとは.....と
 セヴェリは思った。

 北の離宮のあるベルススには、ソリの祖父がいる。

 それに今日話が出たムスカの砦は、ベルススに近い。

 ざらりとした胸騒ぎが一瞬湧き上がったが、セヴェリは努めて
 それをやり過ごした。

 下手に騒げば、クルトの居場所を知られてしまう。

 焦ってはいけない。

 そうセヴェリは自分に言い聞かせた。





  
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