雪に塩
世の中はイラクサの様に残酷で意地悪だ、とでも言わんばかりに何度も。


ゴシアオイを抱いたように、明日には死んでしまいたいみたいな絶望感を漂わせて。



クロユリとマンサクを使ったように、呪文のように出会う人達に可哀想だと輪唱の如く唱えられる。




その度に、杠は思考のループに陥った。



不幸が判らなければ幸せの基準が判らないはずだ。


万人にいつかは必ず訪れる死だってそう思う。



想いを託して死を選んだ人は不幸なの?って。


満足だったって死を受け入れた人は不幸なの?って。



「でも、靱さんも林残のみんなもそんな感じがしないから。私個人やピアニストとして、見てくれてる気がするから。」



神様のお告げみたいに、道端に咲いたタンポポを見付けはしゃぐ幼子が教えてくれた。


幸せ以外が皆無だって、きっと不幸なのだと。



泣けるから笑えて、


悲しみがあるから喜べて、


怒れるから楽しめて。



それが感情でそれが人生なのではないかと。




今の自分に前世の記憶がないから、輪廻転生があるかどうか分からないように。


来世の私に、現世のこの記憶があるという保証はどこにもない。
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