雪に塩
‥‥手の届く大切なものをたくさん、たくさん、押し退け、踏み台にして一番高いところに実ったとても気高い果実を掴み取った。‥‥



「………ん……っ………こ、こは……?」



杠は目を覚ます。


しかし、ここがどこだか認識出来ない。



何故なら、雑貨屋へハンドクリームを買った帰り、何の前触れもなく布のようなもので口を塞がれ腰に痛みを感じた後、気を失ってしまったからだ。



「部屋…?…誰かいる……?」



屋内でソファーらしきところに寝かされていた。


ただ、知らない場所で無闇に動くと怪我をしかねないので、嗅覚と聴覚を働かせる。



階段をのぼる足音がして、だんだん近付いてきた。



ガチャ………――――――



「目が覚めたかい?ユーハちゃん。」


「憑舌、さん…?」



ドアが開く音と共に聞こえた、鍼蔑の嬉しそうな声。


そう、ここは鍼蔑の自社、憑舌興業の応接室。



しかし、平日にも関わらず、従業員の気配がしない。



「クロロホルムとスタンガンって、最強コンビだと僕は思うんだ。」



受け入れられない現実を歪めて自分の考えに酔っている鍼蔑を、止める者はもうここには居ない。
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