その羽根を僕にください
3.羽根を広げ、羽ばたく
「拓海…」

20が僕の隣に来て一緒に様子を見ている。

それは僕の友達、高石透と元カノ、淡路ハル。

「淡路さん、倒れるくらいに体調が悪かったんだ…」

透は大学を卒業して医者になっていた。
淡路さんは正社員で働いていた。

当直をしていた透の元へ淡路さんが運ばれてきた。
これを運命と言わずに何というか。

「20、一つ聞きたいことがある」

僕がその言葉を発する前に20はわかっていたようで頷く。

「拓海、自分が本当に望むならあの二人の元へ行けるよ。
ただ…」

切なそうに20が呟いた。

「全ての記憶、消えるよ」

そう、サーキットで走っていたことも。
周りにいた人の事も。
せっかく出会えた20の事も。

「…うん、いいよ」

だって、それは『今回』が初めてじゃない。
何度もそれを繰り返して今の僕があるんだ。
そしてこれからも。

「じゃあ、私が拓海を送ってあげる、あの二人の元へ」

20は腕を前に伸ばして掌を大きく開いた。

「この二人…本当に凄い力で引き合っているのね。
久々にこういうの、見た」

そして20は左人差し指を上に向けて光を溜め込むと二人めがけてその光の球を投げつけた。

「うん、この二人はやりやすい」

と謎の言葉。

「拓海、私があなたの記憶を消すのはこの女性が出産する寸前にしておくね。
本当はもう少し前からこのお腹にずっといれば自然と忘れるんだけど。
あなたには伝えておかなければいけないことがあるの」
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