その羽根を僕にください
神様の呟き
「ちょっと〜!」

下の方から久しぶりに聞こえる声。

「何か困った事でも?」

1が答える。

「私も行きたい〜!」

別に行く必要なんてない。

「却下!」

私はそう呟く。

「じゃあ、もういいデスよ。
私は全てを放り投げてボンヤリ過ごします。
堕落した天使は不良になります」

3が吹き出す。

「出来ないくせに」

「21と全然一緒にいられない。面白くない」

まあ、元は一つだから。
出逢えば強烈に引き合う。

「一緒にいたじゃない。ついさっきまで」

4が茶化す。

「…21はもういない」

そう呟いたと思ったら沈黙。

気配も消えたので下を見ると。

愛しい恋人を見るかのように生まれ変わった21を見つめていた。

君たちを二人に分けたのは私。

そして縁の深い人たちを常に周りに配置しているのも私。

21が生まれ変わった先の父親は21にとってそういう人。

前世で無意識のうちにそれに気が付きかけた21だったが。

結局、日常生活が多忙でそれどころではなくなり、すっかり忘れていた。

「じゃあ、戻る?」

この子はもう、全ての難問をクリアしてきたので生まれ変わる必要はない。

それでも戻りたい、のか。

20はこちらを見上げて何度も首を縦に振っていた。

「21を助けたい」

戻るには十分な理由だ。

「ただ一つ、約束して欲しい」

私は自分の掌から溢れる光を20に流し込む。

「困難な事があっても絶対に諦めない。
その生を全うするんだよ?
途中で投げ出して帰ってきたら承知しないからね。
…先に21がこちらに戻ってくることになっても」

20は微笑んで

「うん、大丈夫」

まあ、あなたなら数々の困難を乗り越えてきたから大丈夫、か。
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