ポプリ
「何をおっしゃるのですか! 僕は腑抜けでも、冬樹様や雪菜様はご立派な方々です、侮辱するのは赦しません!」

 勇ましく振り返ったものの、襲い掛かかってくるBB弾にぴゃああ、と目を瞑る。

「へん、お前の主人なんて、宇宙の果てまで意識すっ飛ばして寝惚けてる木偶の坊だろうがよ」

「何を言いますか! 冬樹様は大変思慮深く、慈悲深く、手の冷たい人は心の優しい人なのよ、を体現されているお方ですよ! 貴方がお仕えする亜鳥さんなんかっ……亜鳥さんなんかっ……う、ううーん、大変優秀でお美しい方であられますね!」

「なんだ、分かってんじゃねぇか。強いうえに器量よしで頭もいいお嬢は世界一のお嬢だぜ」

「いえっ、世界一の主は我らが冬樹様です!」

「ウチのお嬢が一番だ! 竜に仕えるとされる我が竜河一族に最も相応しい、『龍』の婿を連れてきてくださった子分想いの方だぞ!」

「それならば冬樹様だって、一流武家の夕城一派に属するお嬢様、夕城花様と懇意にされているのですよっ。とってもほのぼのしていますよっ。どうですか、羨ましいでしょう!」

「妖がほのぼのしてどうすんだよこの馬鹿っ! 妖には力だ、力のある者に従うことこそ俺たちの幸せ!」

「いいえ! ほのぼのと幸せになっていく主人を見ることこそ至上の幸福なのです!」

「ちっ、てめぇとは価値観が合わねぇ、だから嫌いなんだ狸はよお!」

「ぼ、僕も力ばかりに頼る河童さんは認めませんよ! だから仲良くいたしましょう!」

「その思考回路が訳分からんくてウゼエ!」

 と、エアガンを一方的に撃ちまくる巻之介。豆太郎はぴゃああ、ぴゃああと頭を抱えて逃げ回る。

 その後ろを、「いやああああ!」と叫びながら亜鳥が通り過ぎていき、「ふふふ、泣き顔も愛いのぅ、良いぞ良いぞ」と白い大柄な男も通り過ぎる。

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