ポプリ
 今日は久々に両親が休みの日だ。

 いつもなら学校から直接龍虎軒へ行き、麗龍の宿題を見てやりながら店の手伝いをするのだが、今日は家に両親がいる。花龍はうきうきと弟の手を引いて帰り道を歩く。

「おい花龍! 俺はもう小学生だから、手ぇ繋いで歩くなんて恥ずかしいことはしないんだ! 幼稚園児じゃないんだから!」

 ほんの数ヶ月前まで幼稚園児だったのに。反抗期の弟はそんなことを言う。

 花龍は少し考えて。

「そうだね。麗龍はもう、立派なお兄さんだね」

「そうだ!」

「でも立派なお兄さんは、か弱い女の子をエスコートしないといけないんだよ?」

「エスコート?」

 麗龍はこてん、と首を傾げる。

「強くて優しい男の子が、女の子を手を繋いで案内してあげるの。お姉ちゃん、一応、女の子なんだけど……」

 ちらり、と麗龍を見ると、彼は少しだけ考えて、そして手を差し出してきた。

「分かった。花龍はぽやーっとしてて危なっかしいからな。俺がちゃんと家まで連れてってやるよ」

「ありがとう。麗龍は頼もしいね」

「おう! 安心して付いて来い!」

 お姉ちゃんの手を掴み、意気揚々と歩き出す麗龍。

 その頑張る後姿がとてもかわいい。花龍はにこにこ笑顔で引っ張られていく。


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