ポプリ
 ミルトゥワの5月27日というのは、特別な日である。

 この日は人族と魔族が講和条約を結んだ日なのだ。何故この日が選ばれたのかと言えば、それは勇者フェイレイの誕生日であるからだった。

 魔族も認める世界の勇者。

 その彼の生誕の祝いの日が講和に最も相応しいと、魔族側からの申し入れがあってこの日、実現した。

 おまけにその昔、カイマールという星に攻め入られたのを撃退した日である、というのもあり、5月27日は『平和記念日』として、星の祭日となっている。

 当然この日は世界中で平和について思いを馳せるとともに、賑やかな祭りが開催されている。

 特に皇都は皇家が主体となって祭りを開催しているので、世界中から人がやってくる。

 その中でも目玉の催し物が、皇城内にあるコロシアムで開催される、皇族による演武であった。

 この星の守護者である皇族たちがその力を誇示し、星の民の信心を得る。そして民は大きな神の力に護られているのだという安心を得る。これはそういう演武会だ。



 皇城内にある祭礼用のコロシアムには、大勢の貴族、そして民間人が集まっていた。

 何万人といる彼らは皆、闘技場の中心へと熱心に視線を注いでいる。

 魔力保有量によって見える姿は違うのだが、闘技場を七柱の精霊の女王が取り囲んでいた。

 火の女王、ティナ。

 水の女王、ウィスカ。

 風の女王、グィーネ。

 地の女王、ウィルダス。

 氷の女王、アラン。

 光の女王、ソラス。

 森の女王、フォレイス。

 神々しい精霊の女王たちに人々は両手を組んで信仰を捧げるとともに、彼女たちの放つ光の向こう側から現れた人影に目を輝かせる。

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