ポプリ
「途中で急に見失ったんだけど」

「なんでだと思う?」

 ティーダは少し考えて、そうか、と麗龍と同じように後ろの壁に頭をつけた。

「シェイドかぁ~」

「そう。誰かが付けてると思って、闇の精霊シェイドに隠してもらったんだよ」

「なんでそこまでして? ……何してんだよ、あんな夜中に」

「それは、まあ。今日の新聞でも読めば分かる」

 新聞? と顔を上げようとすると、べしん、と濡れタオルを頭に乗せられた。

「でもユリアには秘密な」

「秘密なの?」

「恥ずかしいからなー」

 と、麗龍は先に風呂を上がっていった。

 ティーダもすぐにそれに続き、着替えてキッチンへ向かうと朝食の用意が整っていた。今日のメニューはソバのカーシャとビーツのサラダ。育ち盛りにはこれでは足りないだろうと、ロシア風パンケーキのスィルニキもついている。

「ティーダくん、紅茶がいいです? コーヒーがいいです?」

「あ、ええと、紅茶で」

 実はティーダ、コーヒーは苦いので飲めないのだった。お子ちゃまな舌なのだった。

「はーい。そういえば、今日はちょっと眠そうですね。昨日は眠れませんでしたか~?」

「え、分かります?」

 確かに麗龍を追いかけたり、ルナとお喋りしたり、学園長にマンイーターぶっ放されたりしてあまり寝ていない。

「眠れない夜は権左衛門くんを抱いて寝るといいですよ~」

「あ、そうしてます」

「そうなの? うふふ、権左衛門くん、抱き心地いいでしょ~?」

「はい」

「あれねぇ、奏楽ちゃんからのプレゼントなんですよぉ。ティーダくんの転入祝いと引っ越し祝いにって~」

「え、そうだったんですか? 学校行ったらお礼言います」

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