ポプリ
　麗龍は意思を伝えるのが面倒になり、そのまま少女の手を掴んでずんずんと歩き出した。急に引っ張られて少女はヨタヨタしている。大丈夫だろうかと肩越しに振り返れば、不安そうな目をしていた。

「お巡りさんのところに行くからな。安心してついて来い」

　そう言って、更にずんずん進む。

　交番はすぐに見えてきた。

　中にいた二人の警官にこの子が迷子らしいことと、ロシア語じゃないと話が通じないことも伝えた。

　ここが交番だというのは分かったらしく、少女の表情には不安は残るものの、落ち着いたものになっていた。

　警官たちは迷子の届けがないかすぐに調べてくれて、ロシア語も端末の変換機能でどうにかなりそうだった。

「良かったな、もう大丈夫だぞ」

　微笑んで見せたら、少女は目をキラキラさせて頷いた。

「спасибо」

　小さな「ありがとう」が聞こえて、麗龍は笑顔で頷いて交番を後にした。






◇





　十年に渡る壮大なラブストーリー（誇大広告）、スタートです。






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