ポプリ
 龍虎軒に戻ると、入り口には『準備中』の札がかかっていた。

 そっと扉を開けて、中を覗き込む。店内には誰もいない。その奥の厨房から、ぼそぼそと祖父母の話す声が聞こえてきた。

「もういい加減元気だせよ龍娘~」

「だって、だって、麗龍に嫌われたんだもん……クソババアとか言われたんだもん……」

「あのくらいの年頃はしょうがねぇって。覇龍闘もそんなもんだったろ。喧嘩しいしいやってただろうが。才能があると思うからこそ厳しくしてんだろ。今すぐは無理でも、麗龍もそのうち気づくさ」

「ううう、もう嫌だ。だから孫を弟子になんかしたくなかったんだ。私は甘いおばあちゃんになりたい……」

 めそめそする龍娘を、虎次郎が慰めている。

 それを物陰から見ていた麗龍は衝撃を受けていた。

 期待されているのか。

 そのことに胸が弾んだ。

 そして、酷く申し訳なく思った。祖母はちゃんと教えてくれているのに、酷いことを言ってしまった。





 ガラリ、と店の入り口が開閉する音がして、虎次郎がそちらへ顔を向ける。そしてカウンターの上に白い伝票が置かれていることに気付いた。それを見て唇の端を上げる。

「龍娘~」

 伝票を人差し指と中指に挟み、ピラピラと靡かせる。


『ごめん』


 そこには、拙い字でデカデカと、そう書いてあった。











 にゃんにゃん、大好きよぉ~(´;ω;`)







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