ポプリ
 これは、シャンリーが婚約式をした数日後のお話。



 シャンリーの婚約式に出席出来なかった花龍は、日を改めてミルトゥワへと来ていた。

「シャンリー、遅くなったけど、婚約おめでとう」

 シャンリーに似合いそうなピンク色のブーケを手渡しながら、花龍は微笑む。

「ありがとう花龍ちゃん。ルナちゃんの具合はもういいの?」

「うん、元気になったみたい」

「……とてもそうは見えないんだけど」

 と、花龍の隣を見る。

 ふかふかソファに腰を下ろした途端、母の膝に頭を乗せて、とろんとした目をしているルナ。

「昼間は眠いみたいなの。……最近、吸血鬼としての血が濃くなってきたみたいで……でも人としての部分もあって、だから身体のバランスが取りづらくなって、具合が悪くなるみたい。夜になると元気なんだけど……」

「そうなんだ。大きくなったら落ち着くのかな。ヴラド先生は昼間も平気だもんね?」

「うん……見守るしかないね」

 ふわりとした柔らかい黒髪をそっと撫でてやると、ルナは猫のように目を閉じ、スリスリと太腿に頬擦りした。

 そこへ、来客がもう一組。

「おねーちゃーん」

 扉を開けて元気に駆け寄ってきたのはティーダだ。その後からリプニーも続く。

「リプニー先生も来てたんですか」

「ふふっ、先生はもうやめてください。教職を退いて長いんですから。シャンリーちゃんの婚約式からずっと滞在しているんですよ。しばらく旅が長かったので、少しゆっくりしようってことになって」

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