雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「穂香? どうしたの?」


 千咲希が穂香の視線を目で追う……とそこには、春翔の姿があった。春翔の隣には、見知らぬ女の子がいて、腕を組んで歩いている。

 フリーズしている千咲希と穂香に春翔も気付き、はっとして目を見開くと、その足を止めた。春翔の隣にいる女の子だけが、この状況を理解出来ていない様子で、わけがわからないという顔をしている。


「関根っち……どういう事?」


 沈黙を破ったのは、穂香だった。穂香にそう訊ねられ、春翔はばつが悪そうに顔をしかめた。

 千咲希はこの場を走り去りたい衝動に駆られたが、まるで金縛りにあったみたいに体が動かない。

 穂香はキッと春翔を睨み付けると、千咲希の手を取って言った。


「千咲希、行こう」


 穂香に引きずられる様に、千咲希も歩き出す。春翔の顔を見る事も出来ないまま、その横を通り過ぎた。
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