隣に住むのは『ピー…』な上司
自分の胸の動悸がする。
怖さからではなく、トキメキに似た感じがする。


「もう少しあげてみろよ。ピーチが慣れてきてから薬を飲まそう」


ヒマワリの種を差し出された。

四角い爪の付いた指先で摘ままれた種をドキドキしながら受け取った。


ピクン…と肩が跳ね上がる。

課長の指と指が触れ合い、トン…と胸が鳴りました。



「ピーチ」


課長のように優しく呼んでみた。

小鳥は種に近づき、さっきと同じように飲み込んでくれた。


「可愛い…」


ホッとするのと同時に恥ずかしさをごまかした。
課長の顔は見れず、真っ直ぐ前だけを見ていた。


「言った通りだろう」


課長の声に頷きました。
でも、やっぱり顔は見れなかった。


種を食べさせてから薬の飲ませ方を習いました。

課長がスポイトを差し込むと、小鳥は直ぐにでも寄ってきた。


くちばしの先でくわえ込んだところで液体を流し込む。
やらせてもらったけれど、さほど難しくもなかった。


「上手いよ。その調子で頼む」


課長に誉められて嬉しく思いました。

薬を飲ませ終わって「それじゃ宜しく」と玄関に向かう背中をじっと目で追ってしまった。


初めて見る表情ばかりを見たせいか、頭がぼわん…としている。

カザカサと音を立てる小鳥に、ハッと我に返りました。



(ピーチ……)


頼られてもね……と確かに思った。

でも今は、頼られて良かったような気がしている。


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