隣に住むのは『ピー…』な上司
ウラでも素でも
翌日、残念なことが起こりました。



「おはよう、ピーチ」


ふわりとカゴのカバーを外したら。


『ピピピッ!』


小さな鳴き声が響いた。



「ピーチ?」


顔を近づけた。
フェンスに止まっていた小鳥が嬉しそうに声を上げている。


『ピピッ!』


昨夜までの擬音は何処へやら。
すっかり気分がいいようです。


「風邪良くなったの?」


何だか気が抜ける。
もしも困ったことが起きたら課長に電話しようと決めたばかりなのに。


でも。


「どうしよう、課長に教えてあげたい」


そうは思うけれど。


もう起きてる?
こんなことで電話をしてもいい?


困ったことがあったら遠慮なくしていいと言われた。
でも、調子が良さそうだってことくらいで、電話をしてもいいものかどうか。


「朝だけかもしれないし、今の所はやめておこう」


結局尻込みする。
男性に電話するなんて、叔父さん以外にはこの最近したこともない。


呆れるほどの奥手。
もうすぐ30歳になるというのに。



(欠陥人間みたい)


人に言われなくてもそう思う。
異性と触れ合えない私は欠陥商品と同じだ。



「一日中元気でいてね」


声をかけてオフィスに向かった。
何事もなく午前中のノルマを果たし、午後の就業時間を迎えたところで販促課にどよめきが起こった。



「何事?」


隣のデスクに戻ってきた真由香に尋ねてみたら。


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