隣に住むのは『ピー…』な上司
待ち合わせは半ば嘘です。
課長の小鳥は私の帰りを待ちわびてはいない。

そう言えば何となくウソをついている気がしない。
部屋の中で独り、ドアが開くのを待っている存在がいるのは確かだから。




「ピーチ、ただいま」


「ただいま」が言える存在がいるって嬉しい。
考えてみれば私は、ずっとこの言葉を言わずにいたんだ。



『ピピピピ!』


朝よりも元気な声が返ってきました。
思わず駆け寄りカゴの中を覗き込んだ。



『グルル、キュルルル』


くぐもるような声をノドの奥から響かせている。
リラックスしているような雰囲気で、私の帰りを待っていたんだと教えられました。



「…ピーチ……」


ただいま…と挨拶をしながら……


何でだろう。
涙が溢れてきた。



「ぐすっ、変なの」


一人は慣れているはずだったのに。
ほんの2日間、小鳥を預かっているだけだというのに。



「…お水、替えてあげるね」


目を擦って話した。
課長の小鳥は嬉しそうにピルピルと喜びの声を発した。



その晩、課長からの電話はありませんでした。
契約後のいろんな関係があって、やっぱり忙しいんだろうと考えた。


小鳥には一応薬を飲ませました。
元気になったみたいだけど、一応念の為に…と思って。



「残り2日だね、ピーチ」


おやすみ…とカバーを掛けてやった。

小鳥も眠るんだと預かり始めて知りました。


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