さよならはまたあとで
観覧車の一番上で

今日は駅でひとりぼっちじゃない。

律太と遊園地に行く日。
私が五分前に待ち合わせ場所の駅前に着いた頃には、もうすでに律太は私を待っていた。


「早いね」


私が笑いかけると、律太は照れ臭そうに鼻の下を指でこすっていた。


『大変ご迷惑をおかけしております。
8時5分発の常磐線上野行きは、人身事故のため遅れております。』


駅のホームに入ると、そんなアナウンスが響き渡った。


「せっかく今日は時間通りにこれたのにね」


律太は困った顔をして笑っていた。

人身事故…か。

誰かがまた、自分で自分の命を絶ったということである。
きっと、死にたくなるほど辛い思いをしていたんだろう。

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