それを愛だというのなら


主治医の話では、状態が落ち着けば、今までと同じように薬を飲んで鼻注をしていれば、とりあえず大丈夫みたい。

腹膜炎を併発というところまではいっていないので、それで様子を見るようだ。

心配をかけないように、なるべく明るい声音を作って話す。すると。


『バカっ! 心配しないわけ、ないだろっ!』


耳がキーンとするような大声で、健斗が怒鳴った。

怒鳴られたのなんて初めてで、思考がストップしてしまう。もちろん、返す言葉なんて浮かばなかった。

あちらからざわざわと人のいるような気配がしてから、健斗が息を整えるような音がした。


『……ごめん。あとでお見舞いに行く』


そう言われ、電話を切られた。

ツーツーと、無力な音のするスマホを持ったまま、しばらく方針する。

あの健斗が、怒鳴った。

見た目はヤンキーみたいだけど、本当は誰より優しい健斗が、怒鳴った……。


「瑞穂ちゃん、どうかした?」


ぼーっとしていた私に、病棟の看護師さんが寄ってきて声をかける。


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