それを愛だというのなら


私は病気を抱えているけど、こうして生きていられるだけで幸せだと思える。

生きていれば、好きなひとに会える。

明日になれば、クローン病を完治させられる薬が発明されるかもしれない。

ポケットの中で、スマホが震える。

そうだ、ずっと連絡を控えていたサツキたちに、入院していたんだって連絡をしないと。

そう思いながら見た画面には、健斗からのメッセージが。


『退院おめでとう。よく頑張ったご褒美に、俺からの愛をあげよう』


愛って。

思わずにやけながら車を降りる。

荷物を持ってくれているお父さんとお母さんが、先に家に入る。

その瞬間、どこかからドドドドと、聞き覚えのあるエンジン音が。

振り返るとそこに、ヘルメットとジャケットを着てバイクにまたがる、暑苦しいライダーの姿が。

まるで正義の味方みたい。愛と勇気のライダー登場だ。


「健斗!」


駆け出すと、健斗がバイクから降りる。

その瞬間、靴のつま先が何かに引っかかった。


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