それを愛だというのなら


「お前はあと少しで寿命が尽きる。そのとき、死にきれないと言ってこの世にしがみつかれると困るからな」

「そんなことあるの?」


それって、いわゆる幽霊とか、地縛霊って言われるような類になっちゃうってこと?


「実際に、この世に強い執着を残して死んでしまった霊で、どう説得してもあの世に行こうとしないものがいる」

「そっかあ……気持ちはわからないでもないけど」


本当に好きな人がいるとか、小さな我が子を残していかなきゃいけない人なんかは、さっさとあの世に行く気になれなくてもしょうがないよね。


「理解してもらっちゃ困る」

「はいはい」


死神くんは、ひとつでも魂を多く集めなきゃならないんだものね。

大丈夫。残された時間は少ないんだもの。

水沢くんのことをそれほど好きになる時間は残されていない。

ただ、周りの人が味わっている、恋愛のウワズミみたいなフワフワして甘いところだけ、少し味わえればいい。


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