1mmの平行線

今日は久々に早起きしてみた。たったそれだけのことなのに、とても気分がいい。今日はいい日になるとどこかで確信していた。

歯磨きを終えて携帯をチェックしていると「招待」という文字に目が留まる。その文字が意味することを知っていながら、知らないふりをするかのような気持ちで、興味津々にそのボタンを押してみた。

「ASIAN FOOD PARTYーー。」

ほぉ、とまずは大きな題を見て一言。

どうやら友達の家でパーティをするらしく、その招待状のようだった。なぜ招待されたのかもすぐに理解できた。彼女にとってみれば私は日本人の友達の一人だ。きっとこれは寿司を作ってほしいという遠回しのお願いなのだろう。「Why not」(断る理由がない)というフレーズが頭をよぎる。

操られているかのように自然に招待された人達のリストに目を通し

「彼もくるんだ・・・」

と心の中でガッツポーズしていた。

彼とは前回のパーティで出会った年上の中国人でやけに毎日メッセージを送ってくる、しつこくてわかりやすい人。

彼は第一印象が良かった。
中学の時の尊敬していた先生に似ていて、がたいがよく男らしくて初めて見ても誠実な男性だとわかった。

「日本人も来てるのか」くらいの気持ちだったのだが、彼と話しているうちに、もっと話したいと思えるような彼の話術に引き込まれていた。

彼は私の通う高校の近くにある大学に通う大学生。高校生じゃないことくらいすぐにわかった。

でも見た目は日本人なのだが、慣れていないような英語を話し、見事に考える視点が違っていて素直に面白い人だと思った。なによりも中学の時の担任の先生に似ているのがずるいのだ。

そうこう考えているうちに「Good morning(おはよう)」というメッセージの着信音が鳴った。

思わず笑みがこぼれる。


わかりやすいことに彼は

「How was your day?(今日はどんな日だった?)」

と意味もなく毎日尋ねてくる。彼の気持ちくらい鈍感な私にだってわかっていた。彼の癖のある英語のボイスメッセージを聞くたびに、にやけがとまらなくて、この瞬間が好きだった。


彼は、私がよく図書館に行くことを知ってから、やたらと図書館に通う報告までしてくるようになった。どれだけ私のことが好きなんだ。図書館で勉強するという口実で放課後に会ったこともあった。


そんな彼だけど、唯一の妥協点があった。



年上すぎるのだ。7歳の差は高校生の私にとっては大きな壁だった。いくらお金持ちでハンサムで面白くても、この差は越えがたい。

複雑な気持ちが糸のように絡み合っていた。


愛に国籍も年齢も関係ないというが、それを信じるしかなかった。



< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop