不思議の国の白雪王子
♠Episode 4.

「はい、と言う訳で。今から西側へ行きたいと思いまーす。」


「何そのテンション!?」


私がグリム王国へ来て3日目。


昨日王子がお父様に宣言していた通り、剣(レプリカ)を取り返しに行くらしい。


そして今はお城の門の前。


少しいつもと違うテンションの王子に、私はツッコまずにはいられなかった。


「いや…西の国に行くんだし、その事を読者に伝えようと思って。」


王子は私の方を見て眠たそうに言う。


「読者って何!?」


そんなやりとりをしている私達に見送りに来たラビちゃんが


「王子、くれぐれもお怪我だけはなさいませぬよう…どうかご無事で!」


まるで一生の別れでもするかの様にグスグスッと泣いている。


私の心配はしてくれないのね…(苦)


王子はそんなラビちゃんをよそに、ヒラヒラと手を振りながら歩き出した。


「ねえ、どうして今日はこの恰好なの?」


王子の隣を歩きながら尋ねる。


今日の私は、あのパステルブルーのメイド服ではなく、マッチ売りの少女の様な服を着せられた。


王子もいつものコスプレの様な服ではなく、狩りにでも行くような恰好だ。


王子曰く「今日は西の国に行く前に、街にも寄るからな。王子様が堂々と歩いていたら騒ぎになるだろ。」と言う事らしい。


王子は、じーっと私を見ると、ニヤリと笑った。


うっ…こいつがこの顔する時は、絶対なにか変なこと考えてる時だ!


「な、なによ…」


恐る恐る聞いてみる。


「俺達は今日は下町のカップルだ。俺は今日は"王子"じゃない。」


王子は、意地悪そうに『何が言いたいか分かるな?』みたいな顔をしている。


「な、何が言いたいの…」


返事をせずにニヤニヤと笑う。


「名前で…呼べってこと…?」


「そーゆー事。ほれ、呼んでみ?」


なんだかすごく楽しそうだ。


呼んでみ?って…いざそう言われると呼びにくいわね…


「し、しらゆき?」


恥ずかしいので、声が小さくなってしまう。


「何?全然聞こえないなあ。」


ニヤニヤと聞き返してくる王子…いや、白雪。
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