大切な人へ


『鈴木先生っ』

職員室の入口で呼ぶとこちらを向いて
軽く手を上げてくれて

「すぐ行く!そこで待ってて」

トクン…

柔らかな笑顔でそう言った先生と目が合うと
一瞬で顔が熱くなる…


返事もろくにせず コクンと頷いて
廊下に出てしまった




放課後のこの北校舎は生徒も少なくて
廊下で待っていてもあまり人の目が気にならない

今も誰もいなくて、私の焦った足音が響くくらい静かで

耳に伝わる鼓動がくすぐったい



赤くなった顔をなんとかしようと
手の甲で頬を冷やそうとした




「ごめん お待たせ!」


普段は丈が長い白衣を私服の上に着ている先生

でも授業が終わってるからか
放課後に勉強を見てもらう時はいつも私服だけなんだ


それが少し特別な気がして


嬉しい





並んで廊下を歩いていく


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