ラブ パラドックス
ドキドキして、もしかしたらこれから起こるかもしれない事態に備え、体に力が入る。
わたしはノーと言える日本人。
「凛子ちゃん、25日予定ある?」
「ううん。ないけど…」
「よかった。会おうよ。本当はイブのほうがいいけど。あ、でもクリスマスだからって変にかしこまるのはなし。普通に食事しよう」
「うん」
繋いだままの手は、湊さんの腿の上。手は大きくて、暖かい。
「じゃあ、わたしそろそろ」
繋いだ手に力がこもり、少しだけ引き寄せられる。
「凛子ちゃんもうちょっと話せる?」
遠慮がちで、でもまっすぐな瞳。うん、と頷いた。
「凛子ちゃんさ、」
それだけ言って口を閉ざす。なんだろう。と、次の言葉を待つ。
「夏目さんと仲いいよね」
「同期だし、まあそれなりに」
そう答えてから、特別仲いいわけじゃない。と卑屈になる。
だって、美優さんほど夏目くんとの思い出はないし。美優さんほど、夏目くんとの約束もない。