ラブ パラドックス
裏パラドックス Chap.02
翌月の6月に、事務所の名物となった相続セミナーを控え、にわかに仕事が忙しくなっていた。

通常の業務と並行して、準備を進めるからだ。

昨年12月に行ったセミナーデビュー戦の反響が大きくて、相続の相談や依頼が殺到して、しばらくパンク状態だった。

おまけに、この四月から新たに、県内最大手地銀のふたば銀行と指定司法書士契約を結んだため、登記部門も極めて忙しい。

ふた銀との契約を見越して、事務所の司法書士を倍に増員し事務員も雇い入れ、マンモス事務所となった。オフィスも手狭になったため、一階上の空きフロアも借り上げている。

葉月とは、以前と変わらず同じフロアの隣の席だ。


この契約は、前田先生の人脈と信頼で結べたと言っても過言ではない。

前田先生は、県内の書士のドンとも呼ばれる人で、とにかく顔が広い。

俺は将来独立して個人事務所を持ちたいと考えているので、学ぶべきところが多いし、とても尊敬している。
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