ラブ パラドックス
裏パラドックス Chap.03
俺自身二度目となった相続の無料セミナーが、今回も大盛況に終わった。

俺は人前で喋ることが得意なのかもしれない。緊張するどころか、ギャラリーが多ければ多いほど調子が上がる。

特に今回は、市だけでなく、ふたば銀行のホームページでも派手に宣伝をしていただいたこともあり、参加者多数が見込まれたため、午前と午後の2回の開催となったのだが、両回ともほぼ満席だったようだ。


後片付けを終えたあと、予約していた居酒屋で事務所の全員で打ち上げをした。

そして今は、凛子と二人でもう1軒行った帰りだが。


凛子がまたいい感じに出来上がっている。


「うふふ」

「どうした?」

「ん、たのしー。ね?陽」


まだ呼び慣れない俺の名を呼びながら、ぴょん、と飛び跳ねるように距離を詰め、腕を絡め身体を寄せる。

今はまだ雨は降っていないが、もうすぐ雨が降り始める予報だ。

梅雨特有の、あの体にまとわりつくような湿度の高さだというのに、凛子と肌が触れあうことに対する不快感はゼロだ。

ふわふわ泳ぐ凛子を支えるという名目で、こんな人前でも自然に触れ合える現実を楽しむ。


ああ、クソ。

凛子は今日も沼だ。

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