ラブ パラドックス
***


夏目くんとひと悶着あった直後、店長直々にスーツが出来上がったと連絡をもらった。落ちていたテンションが一気に上がったのは言うまでもない。

雨上がりの夕刻、出来上がったスーツを一人で受け取りに来た。


「とてもよくお似合いです。どこか気になる点はございますか?」

「いえ、完璧です。ありがとうございます」


甘いほうの中村くんコーデを着て、大きなミラーで隅から隅までチェックする。

うん。いい。すごくいい!


「今までどうしても袖丈が短くて、気になってたんです。さすがですね。フィット感が嬉しいです」

「ご満足いただけてよかったです」


中村くんはお休みらしく、店長さんに接客してもらっている。今日もお洒落でかっこいい。目の保養目の保養。

「お帰りは電車ですか?かなり重いですけど」

「あ!そっか。スーツ2着ですもんね。でも大丈夫です。なんとかします」


何とかできるあてはないけど、どうしようもない。重かろうが、電車で帰るしかない。
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