僕の星

ふるさとの山と海


 小山は蝉の鳴き声に包まれている――

 木立の間の細い坂道を、虫捕り網を手にした子供達が駆け上がって行く。
 彼らを見送ると、里奈は夏空を仰いだ。積乱雲が高く盛り上がり、その上から太陽の陽射しが容赦なく降り注いでいる。

「ふう、暑~い」

 ショートカットの髪に、赤いリボンが付いた麦藁帽子を乗せている。
 長袖のTシャツと長ズボンは、山を散歩してみたいという里奈に、春彦がすすめてくれた格好だ。虫刺され防止のためだけど、かなり暑い。

 春彦が子どもの頃に遊んだと言う小山は、歩くだけでちょっとした運動になる。首に巻いたタオルで汗を拭うと、里奈は坂道を下りて行った。

 しばらく歩くと、春彦の声が聞こえた。
 11時には戻ると言っておいたので、迎えに来たのだろう。

「里奈! 泳ぎに行くぞ」

 見ると、海パンにパーカーを羽織っただけの姿で歩いている。里奈は思わず笑った。

「何が可笑しいんだよ」

 春彦は手に持ったゴーグルで、里奈の帽子を軽く小突く。

「だって、小学生みたいだから。アハハ……」
「自分こそ園児みたいな帽子だろうが」

 二人は緑の道を歩きながら、子ども同士のように笑った。
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