僕の星

君に惚れてる

 千葉で過ごす三日間は、あっという間に過ぎた。
 春彦の故郷は自然豊かで、食べ物もとても美味しい。この土地の、自然の恵みに彼は育てられたのだと里奈は知った。

 明日の朝、里奈は春彦と一緒に名古屋へ戻る。
 最後の晩だからと、春彦の両親が郷土料理の店に連れて行ってくれた。

 初対面での緊張感が嘘のように、里奈は滝口家に馴染んでいる。緊張するどころか、かえって馴れ馴れしくならないよう気を遣うほどだ。

「まあ、そんなに身構えることはない。これからいろいろあるだろうが、だんだん家族になっていけばいいんだよ。大丈夫」

 春彦の父親は、里奈の心情を察したかのようにぽつりと言う。
 普段はあまり飲まないというお酒を何杯か重ね、にこにこと笑っている。口数の少ない人だけに、里奈を思いやってくれる気持ちが伝わってきた。

「しかし、弟に先を越されるとはなあ~。俺なんか未だに彼女も見つからないってのに」

 食後のお茶を飲みながら、慧一がぼやいた。



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