僕の星

僕の星

「こんなところに、ひとりでいたんだね」

 10歳の春彦が感じ取った怖さを、里奈は今、身をもって理解する。
 無限に広がる星の宇宙が、里奈を圧倒していた。

「まったくだよ。我ながら怖いもの知らずと言うか……でも考えてもみなかったんだ。星空が怖いなんてさ」

 里奈は頷くと、180度の宇宙にかかる、夏の星座を眺めた
 まず見つけたのは、ベガ・アルタイル・デネブの夏の大三角形。七夕の主役達だ。

「あとは、えっと……」

 星座早見盤でもあればと思いつつ南の方向へ目を凝らすと、特徴的なS字カーブを発見。

 「さそり座だ!」

 思わず大きな声が出て、里奈自身が驚いてしまう。

「里奈、びっくりさせるなよ」
「ゴメンゴメン」

 里奈は照れたように謝ると、すっくと立ち上がって南の空を指差した。

「ねえ、見て。春彦の星座」
「俺の?」

 春彦も立ち上がると、里奈が指す方角へと視線を向ける。

「そう、さそり座。ほら、明るい星を繋げると、釣り針の形になる星が並んでるでしょ? あれが、さそり座のしっぽだよ」



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