僕の星
 もっとゆっくりしたかったけれど、旅行シーズンのためか観光客が多く、なんとなく落ち着かない。里奈達はグループでまとまると、見学もそこそこに大仏殿を後にした。


 里奈は歩きながら、歴史を感じさせる古都の建物を見渡した。

 昔々、大陸の西の果てから、シルクロードを経て様々な文化が伝わったという。奈良には京都とはまた違う趣とロマンがあった。

 途中、みんなで鹿にせんべいをあげた。

 お辞儀をするとお辞儀を返す鹿の仕草が面白くて、延々とせんべいを与えていた里奈は、皆が先に進んでいるのに気付かず置いてきぼりになった。


 慌てて次の行き先である興福寺の五重の塔のところへ走ると、他のグループの皆も何組か集まっていた。

 ブレザー姿の男子数人と、写真を撮っているのが見える。

 少し離れた場所からその様子を眺めていると、ゆかりが傍に来て、複雑そうな表情をした。

「あの男の子達、りっちゃんのメル友だって。SNSで知り合った、千葉の高校の人。旅行の時間と場所が一緒なのがわかって、ここで落ち合う約束がしてあったんだって」

「へえ~。すごい偶然だね」

 里奈は感心した声で言い、りっちゃんを見やった。
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