僕の星
 車窓に映る景色は、まぶしかった。
 民家の屋根が真夏の太陽のもと、ギラギラと照り焼きになっている。

 今日も半端ない猛暑だ。
 だけど、冷房の効いた車内は心地いい。里奈は夏の暑さも、名古屋に置いてきた3人のことも、しばし忘れる。レールのつなぎ目を打つ規則的な振動に、ただ揺られていた。


 岐阜駅に着くと、とりあえず改札を抜けて、表に出てみる。
 里奈は駅前をぐるりと見回した。

「ずいぶん印象が変わったなあ」

 岐阜市には、子どもの頃に家族で花火大会を見に来ていらいだ。

「さて、これからどうしよう」

 とりあえず、長良川と岐阜城を見たいと思う。
 観光案内所で乗り場を確かめてから、岐阜公園の前を通るバスに乗った。

 岐阜城は山城で、金華山の頂に建つ。その金華山の麓に岐阜公園があるのだ。

 斎藤道三や織田信長が城主になったことで有名な岐阜城。戦国時代が好きな歴史ファンには、お馴染みの城である。里奈は一度も訪れたことがなく、いつか見学したいと思っていた。

 バス代は片道210円。里奈は帰りのバスと電車代を別にとっておいて、残りで行楽しようと決めた。
 これで今月の小遣いはゼロになるが、こんな使い道なら惜しくない。
 


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