僕の星

やっぱり好き

 二人はしばらくの間、遠くに霞む山々を眺めた。木陰に風が渡り、火照った身体を冷やしてくれる。

「君の名前は、りな……だよね。苗字は?」

 里奈がオレンジジュースをほとんど飲み終えた頃、滝口が訊ねた。

「苗字は森村。フルネームは森村里奈。下の名前は、知ってたんだね」
「五重の塔のところで、君の友達が呼んでただろ。りな~って」
「りっちゃんとゆかりだ」

 里奈の脳裏に、修学旅行での光景がまざまざと蘇る。
 他校の男子と写真を撮り合い、盛り上がっていた女の子達。それを離れた所から、独りで見ていた私。

「君の友達、三田と親しそうだったよね。知り合いなの?」
「うん。小柄な女の子がりっちゃんって言うんだけど、三田君とメル友なんだって」
「ふう~ん」

 滝口は気のない返事をすると、ペットボトルのお茶を飲み干した。

「ところで、君はどうして俺の苗字を知ってるの?」

 彼は里奈の顔を見つめる。とても真面目な顔つきだ。

「誰かに聞いたの? 俺のこと」
「うん、実は……」

 里奈はバッグから例のお守り袋を取り出すと、滝口の前に掲げた。
 彼は面食らい、目を大きく見開く。

「持っててくれたの……っていうか、持ち歩いてるの!?」

 手品でも見せられたかのように、驚いている。里奈は何だか可笑しくて、クスクスと笑った。
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