僕の星

慌てないでね

 パイン材のテーブルに、オムライスセットが二人分運ばれて来た。デザートとドリンクも付いて850円のセットは値段の割にボリュームがあり、若い里奈達の胃袋を満たしてくれる。

「何だか色気より食い気ってカンジ?」

 里奈が言うと、ゆかりは微笑みつつも小首を傾げた。
 長年の付き合いである友人の、いつもと違った空気を感じ取り、里奈はスプーンを止めた。

「どうかしたの?」
「うん、ちょっとね」

 ゆかりがらしくもなく、とろんとした表情になる。里奈はぴんときて、冷かすように指摘した。

「もしかして……この前の人と、いい感じなんだ?」

 9月のはじめ頃、ゆかりが男の子と二人で出かけるという話を聞いた。サークル活動で知り合った、他大学の男子学生だ。とある作家の講演会に誘われたとのこと。

「えっと、森崎君……だっけ?」
「そう、森崎君。あれから何度か食事したりして、けっこう気が合うみたい」

 ゆかりは里奈の顔を見ずに言うと、オムライスを頬張った。

「良かったじゃない。おめでとう、ゆかり!」
「おめでとうだなんて……大袈裟だよ」

 と言いながら、ゆかりは目尻を下げたまま。蕩けそうな様子である。

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