女の子しかいない世界に転生した僕はしかたなく男の娘として過ごします!
今ここに存在する数多の火の精霊達よ、
汝ら、今、我の手に集まりし、
その姿を業火と変え、
その炎で敵を焼き尽くせ!!
《太陽の炎(ソーラーフレイム)》

森の中から綺麗で澄んだ声が聞こえてきた。そして、その声が聞こえなくなったと同時に、さっきまで暗かった空間が一気に明るくなり、空から、1本の炎の柱が降ってきた。その炎の柱はデスハンターがいた場所を焼き尽くし、消えた。その光景に、口を開けたまま呆気に取られていた。そこに、森の中から、
「大丈夫だった?」
と女の子が走ってきた。
「あ、うん」
どうにか答えたものの、あまり光景に理解が追いつかない。さらに、
「立てる?」
腰が抜けて一人で立てず、女の子の手を借りるなんて・・・・・・
「ありがとう」
「どういたしまして」
彼女は笑顔でそう言った。
「それで話は最初に戻るんだけど、君はどうしてここにいるの?見た所、装備も何もしてないみたいだし、どうしたの?」
「えっと、道に迷って……」
「道に迷った!?どうやって?すごい…」
やばい、流石に適当すぎたかお、少し俯きながらビクビクしている僕を見て、彼女は、
「まあ、詳しくは聞かないわ」
僕はその一言を聞いて少し心が軽くなった気がした。更に彼女は続けて、
「君、帰るところないんでしょ?こんなところで死にかけているってことは」
その言葉を聞いて僕は現実に引き戻された。そうだった、僕帰る場所ないんだった……。僕が急に落ち込んだのを見て、彼女は何かを思いついたように、少し声高に、
「帰るところが無いなら私の家に来て居候するといいわ」
えっ、どういうことだろう……
「あのぉ、なんでそうなるんでしょうか?」
まじで、本当に意味がわからない。
「あ、理由?それはね〜」

(ゴクリ)

「君のことが気に入ったからかな?」

はい??

「な、な、そ、それはどういうことですか!?僕のどこに気にいる要素が…」
どうして僕なんかに、何の取り柄もない無能な男の子なのに…。
「気に入った所は、その『僕』っていう一人称と、君の顔かな。だって、凄く可愛いくてタイプだもの♡」

へっ??

僕が可愛い?なんで、どういうこと?でも、居候させて貰えるのはありがたいし…よし!

「そうなんだ。あはは。これから宜しくお願いします」
と、その時、
「あ、そういえば、まだ自己紹介がまだだったよね?」
あっ、そういえばそうだった。
「私は、イリス・フォン・ルートビッヒ。イリスって呼んでね♡」
イリスさんかふむふ。
「僕は・・・」
あっ、名前どうしよう・・・偽名でいっか・・・
「僕はベリネ・ライム。ライムと呼んでください」
流石に適当すぎたかな・・・変に思われるかも。内心焦っている僕をよそに、イリスは、
「ライムちゃんね、これから宜しくね」

ん?《ライムちゃん》・・・はい?

「えっ、ちょっとまって。なんでちゃん付けなの!?だって、僕はどこからどう見てもおと――」
慌てて弁解しようとする僕の声を遮って、
「なんでって、ライムちゃんは女の子でしょ?それにこの世界には女の子しかいないから、ちゃんやさん付けが普通でしょ?あ、もしかしてさん付けが良かったかな・・・ライムちゃん年下っぽかったから、つい・・・」
「あ、ゼンゼンダイジョウブデス、ちゃん付けでいいですよー」
「そうよかった。それじゃぁ、ちょっと待ってて。詠唱するから少し離れててくれる?」
そう言われ、どうにか冷静になった僕はどうにか2.3歩下がる。それを見てイリスは
「・・・・・・」
僕に聞こえない小さな声で何かを言った。そして、言い終わると同時に、イリスの足元に約直径2mの幾何学模様の魔法陣が展開された。
「ライムちゃん、こっちに来て」
「は、はい!」
僕はその魔法陣の真ん中。イリスが立っているところへ行った。イリスは僕に手を差し出して、
「心の準備はいい?」
僕は初めて女の子の手を握ることに戸惑いながら、恐る恐る掴んだ。と、同時に二人の体がふわりと浮いた。体が浮いた事に驚いて、僕は目をつぶった。隣にいたイリスはそれを見て、
「大丈夫、怖くないよ。ほら、目を開けて」
そっと目を開けるとそこには、広大な大地と所々に見える野営の灯火、そして、遠くには街の光が見えた。僕は空を飛んでいた。

「わぁ、すごく綺麗。こんなの初めて・・・」

自然と口から感嘆の声がこぼれた。僕は初めて見る空からの景色に心奪われていた。イリスはその隣で薄く微笑んでいた。
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