ポンコツ同盟

「じゃあ僕のゴーストライターになってくれる?」

「それは無理です。」

「え、」

「だって、俺が曲作っても、樋口先輩が弾けなかったらバレますよ。」

そう言うと、樋口先輩は苦い顔をした。

面白くて笑った。

「でも、樋口先輩は人を楽しませる天才だと思います。先輩のかえるのうた聴いて、俺、ピアノいいなあって思いましたもん。」

「それバカにしてるよね?」

「してないですよ。」

樋口先輩のおかげで、俺は決心がついた。先輩のピアノがなければ、俺はたぶん二度と、ピアノが好きって口に出せなかっただろう。ずっと苦しいままだっただろう。

先輩と別れて外に向かうと、平井と葛西がいた。やばい。忘れてた。

「おせーよ桜庭!」

「ごめんっ!」

「早く着替えろよ。」

「あのさ、平井、葛西…」

「何?」

「ん?」

「俺、サッカー辞めるわ。」

「「…は!?」」

「サッカーバカが何言ってんの!?大丈夫か!?頭打った!?」

散々な言われようだなあ。でももう、自分の気持ちに嘘をつくのは辞める。

今日からピアノバカになる。

< 292 / 377 >

この作品をシェア

pagetop