天に満たるは 華の咲く
魔祓いの華舞依ガーデン
僕の名前は春宮 朔羅(はるみや さくら)。

良く晴れた夏の事。

ジリジリと照り付ける太陽から逃げる様に、日陰を歩いて居た。

「…あぁもうっ‼……痛い」

モヤモヤした気持ちを抑えきれず大声で叫び、取り敢えず近くにあったブロック塀を一殴りしたものの、ジンジンと痛む右手を涙目で擦りながら再び歩き出す。

よく名前と容姿を見て、女子だとからかわれるが、列記とした"男"である。

今日も学校でからかわれ、イライラの限界を迎えた僕は暴れてみたが、今となっては反省しか出てこない。

そんな時、ポケットで携帯が軽快な音楽と共に鳴り始めた。

ディスプレイを見ると、妹の雅美(みやび)だった。

「はい、もしもし。どうしたの?みや…」

『もしもし⁉どうしたも、こうしたも無いわよ‼今日は何の日か覚えてるの??お兄ちゃん!!』

電話に出るや否や、早口で捲し立てる妹に気圧され、携帯を耳から離し少し考える。

はて、何の日…だったか?

『もしもし?? ねぇ、お兄ちゃん聴いてる?もしかして、忘れたとか言わないわよね!?』

電話の向こう側できゃんきゃん騒ぎ立てる妹に、何の日か思い出せない僕は、恐る恐る尋ねる事にした。

「雅美…ごめん。何の日でしたでしょうか?」

妹が恐ろしく、つい敬語になってしまう。

『………誕生日よ。みやの誕生日!!もう、お兄ちゃんなんか知らないっ‼!!』

ブツッ…ツー、ツー、ツー。

切られた。そして、怒られた。

「誕生日…か。うわぁ、怒った雅美、超~おっかないんだよなぁ…」

電話を掛けてくる辺り、推測するにプレゼントの要求だろう。

いや、絶対そうに違いない。

去年の誕生日では、雅美が好きなぬいぐるみブランドの限定テディベアをプレゼントしたが…果たして今年は、何にしようか。

そんな事をツラツラと考えながら、プレゼントを求めて隣街のショッピングシティへ向かう。

電車で10分揺られ、歩いて5分の所にショッピングシティがある。

ショッピングシティは品揃えが良く、様々な店が並んでいるので、大抵の物はここで手に入る為、プレゼント選びにはもってこいな場所だ。

「さぁて、何にしようかな?」

歩き回りながら、店の品を見定める。

一通り品定めした後に、良いと思った宝石店に入り、プレゼントを選ぶ。

「雅美は女の子らしい色が好きだからなぁ…ちょっと値が張るけどコレにするか」

そう選び抜いたのは、小振りなハート型のピンクサファイアが付いたシルバーブレスレット。

店員に頼んで、プレゼント用に洒落た小箱とリボンに包んで貰い、お礼をして店を出た。

何となくお腹が空いた朔羅は、クレープ屋に寄りチョコバナナクレープを購入し、ベンチに座った。

『ねぇねぇ、知ってる?華魅町に新しく出来たお花屋さん』

『えっ?知らなーい』

ベンチでクレープを堪能している朔羅の向かい側に座る女子高生二人が、楽しそうに会話している。

どうやら、華魅町に新しくオープンした花屋が有名らしい。

なんでも、超イケメンの和装青年が二人居て、超珍しい綺麗な花を販売して居るとか。

「後で行ってみるか…」

気に入ったら、妹のプレゼントにしよう。

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