素敵な夜はあなたと・・・~君に恋していたい~【番外編完】

 久しぶりの楽しい食事だった。茜と一緒に夕食を作り一緒に食べる。以前は当たり前の事だったのに、こんな楽しい時間を俺は自分から手放したのだ。

 それでも、茜は俺とこんな時間を過ごしてくれたことに感謝している。



「あ~満腹! 優也さんって結構食べるのね。驚いたわ。」

「ん? そりゃあ、茜が作ってくれた料理だからな、幾らでも食べれるよ。」


 茜の顔を見ながらそう言うと茜は少し頬をピンク色に染めている。恥ずかしいのか女の子らしい顔から大人の女性のような恥じらい方をする。こんな茜を普通なら抱き締めるところだろうが、俺は、じっと我慢するしかない。


「茜、今日はありがとう。とっても楽しかったよ。」


 すっかり幸せな時間を過ごし俺は時計を見るのを忘れていた。早く帰らなければ遅い時間まで女の部屋に入り浸るわけにもいかない。


「じゃ、そろそろ帰るよ。遅くなくなってしまう。」

「もう遅いよ? 泊って行けば?」


 茜は以前一緒に住んでいた時と同じ感覚なのだろう。俺を元夫として見ていない。それに、一人の男としても見ていない。だから、そんなセリフが簡単に言えるんだ。

 だけど、俺はそうじゃない。ここへ泊れなんて言われれば期待してしまう。第一、狭い部屋が一つあるだけでどうやって眠れば良いんだ?


「そういう訳にはいかないだろう?」

「変なの、前は一緒に暮らしていたじゃない。気にしなくても平気よ。それに、ここからの方が会社も近いわよ?」


 茜は平気な顔をして言うが俺は平気じゃない。屈託ない茜に俺は完全に意識してしまっているんだ。胸がドキドキして茜に触れたくて堪らないんだ。

 そんな拷問をさせてまでも俺にここへ泊れと言うのか? 茜、それはあまりにも酷すぎる。会長よりもっと茜の方が残酷だ。

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