こんな私が、恋したみたいです。
「ねぇ、あのさ、俺も言いたいことあるんだけど」



しばらくの沈黙の後、面会時間ギリギリで話を切り出した。




「なんですか?」




「俺さ、謝りたくて」




「ん?」



またそうやって、首を傾げるんだから。



「神多が俺のこと忘れるくらい、前の俺は神多に悪いことしてたから」




「…そーなの?」



さっきと打って変わって、疑う目になる。




「そう。だから、謝りたい」




「…そーなんだ」



ボフっと背もたれに寄りかかって、下を見た。




「もしかしてさ、私全員から嫌われてた?」




「…え?」



思わぬ事を聞かれて、狼狽えてしまう。




「やっぱ、そーなんだ。おかしいと思ったんだよね」



「…何が?」



「この一か月、私ママとしかラインしてないし。なんなら今年に入ってラインしてる人、橋森くんと望月くんだけだし。女の子は?私って、男好きだったの?ビッチだったの?そのせいで、ひとりぼっちだったの?」




りっちゃんの握る携帯に、涙が垂れた。



「…違うよ」



りっちゃんは、そんな人じゃなかった。みんなと仲良くしたくてたまらなくて、でもなぜかハブられて、仕方なく、俺らと一緒にいたんだ。




「何が違うの」




「神多は、すっげー優しくていい奴で、友達が大好きな子だよ」



「じゃあ、何で友達いないの?吐血しても誰もお見舞い来ないの?」




「…それは…、いま、テスト中だから」



咄嗟に、嘘をつく。



「嘘。テスト中だったら部活ないよ」




でもそれは、すぐに見破られた。



「…そう、だね」




「嘘つき。大体、橋森くんは私の何なの?何で、学校サボってまでここに来てくれたの?」




「それは…」



わかんないよ。だって、俺はりっちゃんの何でもない。



だからって、ここで、思いの丈を伝えていいものかもわからない。



「…帰りなよ」



「え?」


涙を流しながら、静かにそういう。



「私のこと、いじめてたんでしょ?学校中みんな敵なんでしょ?全部忘れて都合良くなったからって呑気にこんなとこ来ちゃって」




「ヤダよ。帰んない」




まだ、後3分あるから。



「テスト中なんでしょ?帰って、勉強でもすれば」



「テストなんて、どうでもいい」




たとえ今日がテスト期間でも、絶対にここに来ていたと言える自信がある。





「…あっそ。じゃあ、勝手にすれば」




そう言って、りっちゃんは布団の中に隠れてしまった。




「あと、その髪の毛、全然かっこよくないよ」




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