リアルな恋は落ち着かない
「おはようございまーす!」

「おお!美瑠久ちゃんに橘内さんおはよう。かわいいどころとキレイどころが今日は仲良く一緒だね」

「はーい!」

向坂部長の声に、美瑠久ちゃんが元気に答える。

私はなんだかげんなりとして、挨拶の声は出なかった。

「じゃ、橘内さん、ファイトです!」

先に自分の机に辿り着いた美瑠久ちゃんが、私にそっと耳打ちしてから、そのまま笑顔で席に座った。

私はさらにげんなりとして、自分の席まで歩いて行った。


(もう、いや・・・)


朝からどっと疲れてしまった。

疲労と混乱で頭はいっぱいいっぱいなのだけど、椅子に座った私の手は、ロボットのように勝手に動いてパソコンの電源を入れていた。

大した動きじゃないけれど、席に座れば仕事を始める。無意識に動くのは我ながらすごいと思ってしまった。

そのまま、メールチェックをしようと画面を目で追いながら、頭の中では、課長のこと、五十嵐くんのこと、美瑠久ちゃんのことを考えた。


(なんか誤解だらけだな・・・)


美瑠久ちゃんにつかまって、五十嵐くんの誤解は結局解いていないまま。

そして美瑠久ちゃんの誤解については、もう、どうにもならない気がした。


(あの調子だと、何を言っても美瑠久ちゃんなりのポジティブ変換されそうだよね・・・)


言い訳しようとすればするほど、ますます彼女の興味を煽ってしまうような気がした。


(とりあえず、美瑠久ちゃんは保留にするのがいいかもしれない・・・)
< 75 / 314 >

この作品をシェア

pagetop