東高★男子サッカー部~私の仕事はマスコット
黒い噂



そして大会を前日に控え、白熱した紅白試合の様子を私は沙良先輩とベンチに並んで眺めていた。



いつもよりも気合の入り方が違うのか、時々叫び声がサッカー場を揺らす。



「綾ちゃんも……辞めるんだって?」



前を向いたまま、沙良先輩は小さな声で、でもはっきりと呟いた。



3年生が引退する、という事は3年生のマスコットも引退する……という事である。



沙良先輩は次期マスコットのリーダー。いろんな情報が入ってくるんだろう。



深い茶色の瞳が私の方へ向けられて、その可憐さに想わず吸い込まれそうになる。



「すみません……」



奈々子ちゃんに続いて私もなんて、申し訳なくて言葉に詰まる。



< 172 / 220 >

この作品をシェア

pagetop