~悪魔執事とお嬢様~


これでもきちんと唄ったはずなのに、
これより上を求めるのか?こいつは。

ナイチンゲール……誰もが分かるように、
これは皮肉だ。


イギリス人はよく皮肉を言うが、執事が
主人に向かって言うなんて
聞いたことがない。

しかも、いい意味ではなく、
悪い意味で使うなんて。



「そんなに私のナイチンゲールのような
囀りを聞きたいのなら、
別の歌を歌ってやろうか?」



「いえ結構です。本当にやめてください。」



シリウスは今までにないくらい
怯えていた。

いや、嫌がっていた。



「そこまで嫌がられるとは心外だな。
少し傷つく。」



「でしたら私が聞けるレベルまで
ロンドン橋だけでもあげてください。」



っ!?
あれだけ歌ったのにまだ上を求めるのか?



「まさかとは思いますが、
もう歌は上手くなったから大丈夫。
などと思っておりませんよね?」



……私の歌、そんなに酷いのか!!

今ならましになったと思っていたが。



「もう一度歌ってみてください。」



「歌わせるなら耳を塞ぐのをやめろ。」



真面目に耳を塞いでいたからな。

聞く気あるのか。



「申し訳ありません。しかしまあ、
宝の持ち腐れとでもいいますか……

お嬢様の声質はとても綺麗ですのに、
持ち主が音痴では生かしようも
ありませんね。」



「それ、お前がいうか?」



ここ最近わかったのだが、シリウスは性格以外全てが完璧だ。

性格以外。

顔、声、身長、体つき、喋り方…あと、
力は人間以上だし、執事がこなさなくても
いい雑務までできる。


これに関してはヴィル爺も同じだが、
ヴィル爺だって昔は失敗をしていたと
父から聞いている。


性格さえよければ、きっと私は興味か、
もしくは好意を抱いていたはずだ。

性格さえよければ。



「悪魔に美しい宝を求めるのは
間違いですよ。元々が腐った宝ですから。」

< 110 / 205 >

この作品をシェア

pagetop