咲き誇るものは忍の恋なり
静寂に包まれた場所に、1つの足音が響く。

「!!」

そこにいた1人の者......もとい、紫音は足音の方へ振り向いた。

「主......」

......ここは冴音らの本拠地、いわゆるアジトである。ほんのこの前まで賑やかだったこの場所も、今はしんと静まり返っている。星羅と澄晴......この2人の裏切りの重大さが身にしみてわかる。

「どうでしたか?奴らは......」

「あの2人が、僕らの能力について話していました。......おそらく、次の戦いが“最後の戦い”となるでしょう。」

紫音の問いに冴音が答える。冴音が“あの2人”.........星羅と澄晴が紫音について話していたことを言わなかったのは、何かあるのか......はたまた偶然か.........。それを考えられる者はいない。

「.........星羅、澄晴.........」

紫音が2人の名を呟く。

「紫音。」

冴音が冷たい声を出した。

「裏切り者のことを考えるのはやめなさい。」

「!申し訳ありません.........。」

「............いや、いいんです。僕も少し強く言い過ぎました。」

2人の間に静寂が広がる。

「.........紫音」

冴音が再び声をだした。しかしその声は先程のような冷たい声ではなく、少し哀しい声だった。

「.........はい、何でしょう?」 

「......ずっと、そばにいてくれますか?」

冴音の言葉に、紫音は意表をつかれたような顔をする。そして、

「.........はい。出来る限りであれば。」

と微笑んだ。

「.........ありがとう。......では、行きますよ。“最後の戦い”に。」

「え。今からですか」

「はい。異論は許しません。」

「.........御意。」

破壊活動は、意外と急なものであった。
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