迷走女に激辛プロポーズ
仕事に関してもだが、全てにおいて佑都は迷わない。『チャンスの神様には前髪しかない』が彼の口癖だ。言葉通り、彼は即断即決でチャンスをものにし、成功を収めてきた。

「なぁ。楓、覚えているか? 神崎君と俺が言った言葉を」
「――何て?」

「しょせん世の中、男と女、好きか嫌いか。それに悩むのが人間だが、感情が絡まり過ぎると蟻地獄のように這い出せなくなる。そんな時は気持ちをリセットして、初期に戻ってみる……まっ、そんな話だ」

「うん……覚えている」

遠い昔のようだが、たった一か月前の話だ。

「だから、お前もすべての感情を一度リセットしろ。真っ新になって俺とのこと考えろ。先輩との約束だから、一週間待ってやる」

返事をしたくなかった。でも……逃げはいけない。

「――うん」

小さく呟く。

黙りこくった車中に、カーラジオから流れ出すハワイアン ミュージック。
場違いだな、と思って聴いているうちに、心がゆっくり解れ暗闇の向こうに微かな明かりを見たような気がした。

そうだ、リセットしてもしなくても、これだけは言える……私は佑都に“嫌い”と絶対に言えない。
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