迷走女に激辛プロポーズ
個人的嗜好で言えば、この外見、嫌いではない。だが、内面は如何なものかと首を捻りたくなる。

しかし、世間は私の評価など一切関知していない。入社以来、佑都のファンは増加の一途を辿っている。

彼女たちは彼との甘いロマンスを夢見、日夜、自分磨きに余念が無い。それ故、我が社の女性は仕事もできる美人揃い。他社からの評判もすこぶる良い。佑都の恩恵を受け会社側はメリットいっぱいだ。

その見返りかどうかは知らないが、彼は課長の座を入社三年で手に入れた。
この時ほど『美』は『金』と思ったことはない。

そんな私は彼女たちを眺めながら、心の中で『ご愁傷様です』と手を合わせる。何故なら、その夢は決して成就しないからだ。

だって……コヤツの胸には、永遠にして最愛の女性がいるのだから……。
それなのに……何をトチ狂った?

「お前ならそう言うと思って、今日は……」と言いながら、佑都は脇に置いたビジネスバッグから、A四版の封筒を取り出し、「これを持参した」と焼きおにぎりの乗った皿の横にそれを置く。
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