あなたとホワイトウェディングを夢みて
第五章 もっと君を知りたい

 留美から受けとったCDのメディア。これまでならあら探しに夢中になってパソコンに向かっていた郁未だが、今はそんな気分になれない。
 デスクの背後にあるパノラマ窓の方へと椅子の向きを変え、外の景色を眺めながら昨夜からの出来事を順序立てて思い起こしていた。

「留美……」

 思わず口に出てしまった。父親との賭けの為に留美を自分に夢中にさせるはずが、これまで知る留美とは別人のように女らしい姿に、郁未の神経が参ってしまいそうだ。
 それに、郁未にはどうしても気になることが一つあった。
 昨夜ベッドへ自分から入っていったのは覚えている。そして、今朝、目が覚めたらベッドに寝ていたが、少し壁際の方に身体を寄せていた。
 寝室は一つ。ベッドも一つ。そして、今朝自分の身体を覆っていたタオルケットは、夕べ留美が茶の間へ持ってきてくれた、ペンギンのイラスト入りと同じタオルケットだ。
 狭いアパートで一人暮らしする女性だ。客用寝具を揃えているとは考え難い。もしや、留美は同じベッドで一緒に眠ったのだろうかと、そんな疑問が湧く。
 それに、何となく眠っている時の匂いを微かに覚えている。甘くてイチゴのような香りに包み込まれていたようにも感じる。
 留美と同じベッドで一晩過ごしたのだろうかと、ちょっと乙女チックな気分になる郁未だ。
 するとそこへ、イヤな着信音が流れてくる。
 父親からの電話と判ると、電源を切りたい思いに駆られるが、仕事に私情は挟まないと電話に出る。

「パパだよ〜」

 またもやふざけた電話だ。
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